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【保存版】マルチディスプレイ環境の作り方

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「マルチディスプレイ(=マルチモニター)」ってご存知ですか?

ご存知でない方は、「株取引 ディスプレイ」などとググっていただいて、株取引を行う方の作業環境を見ていただくと分かりやすいかもしれません。

PC作業環境で、メインディスプレイ以外のサブディスプレイを増設する”アレ”です。

株トレーダーは市場が開いている間にいくつも指標をチェックする必要があるため、サブディスプレイを4枚6枚と準備されている方がいますが、メインディスプレイ+サブディスプレイ1枚でも基本的な構築方針は変わりません。

出先でマルチディスプレイを構築することは難しいですが、自宅の書斎などに関しては一度環境を作ってしまえば快適すぎて元には戻れません。

今回はマルチディスプレイについての概要をまとめつつ、シチュエーション別のオススメアイテムをご紹介していきたいと思いますので、最後までお付き合いください。

尚、ページ末尾に「【重要】マルチディスプレイ環境を構築する上で難しい点」という項目をまとめていますが、これを読み飛ばしてしまうと機器の互換性に関して躓いてしまう可能性があります。こちらも併せてご確認頂くようお願いいたします。

マルチディスプレイのメリット

それでは、マルチディスプレイには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

結論から言うと「PCの表示領域が拡大されるので、アプリケーションを最小化しておく必要がない」ということです。

例えば、ブラウザで表示している数値をエクセルファイルに入力しつつ、しかも電卓アプリで計算もしたいという場合には、各アプリケーションのサイズを調整して1画面に収めるか、ショートカットキーを用いるなどしてせわしなくアプリケーションを切り替えるしかありません。

ノートPCは言わずもがな、デスクトップPCで作業している場合でもかなり不便ですね。

これを解決するのが「マルチディスプレイ」なのです。

【重要】マルチディスプレイ環境構築を難しくしている点

これに関しても言及しておきたいと思います。

マルチディスプレイ環境構築を最も難しくさせてしまうのは、おそらく「USB-Type Cの規格の複雑さ」にあります。

まず誤解されがちですが、「USB-Type C」とは「形状規格」であって、同時期に策定された「USB3.1」やその後継規格である「USB3.2」、「USB4」などの「データ転送規格」とイコールではありません。

そして、分かりにくいことに「USB-Type C」の「形状規格」を採用した「Thunderbolt」という「データ転送規格」もあります。これはインテルとAppleが共同開発した「データ転送規格」であり、バージョンによってはUSBとの互換性もあります。

ようは、自分の手元にある機器の端子の形状を見てパッと判断するのではなく、メーカーが公表している詳細な仕様を確認することで、USB or Thunderboltの判別、バージョンの判断まで行った上で、必要な機器を買い揃える必要があります。

また、USB Type-Cにはオルタネートモード(Altモード)という映像出力に対応したモードがありますが、USB Type-Cの発表から対応する映像出力規格が順次追加されてきた経緯があり、どの映像出力規格までサポートするかという点に関してはメーカーのさじ加減一つなので、PCのUSB Type-Cポートが「オルタネートモードに対応している」という表面上の文言だけ確認して、例えば「HDMI Inポートのみあるディスプレイ」を購入してしまうと、接続できなくなってしまう可能性があります(DisplayPortはオルタネートモード開始当初の規格なのでサポートされている可能性が高い)。

  • DisplayPort – 2014年9月のバージョン1.3より対応
  • MHL – 2014年11月発表
  • Thunderbolt – 2015年6月のThunderbolt 3より対応
  • HDMI – 2016年9月に発表され、HDMI 1.4より対応
  • VirtualLink – 2018年7月17日に発表された、VRヘッドセット向けのオープンな規格
Wikipedia「USB Type-C」のページより引用。

ここまでを踏まえてUSB Type-Cでマルチディスプレイを実現するにあたっての各種規格の対応状況を表にしたいと思います。

形状規格データ転送規格サポート状況
USB Type-CUSB3.1・「Thunderbolt X」をサポートしていない。
・「DisplayPort」以外のオルタネートモードは保証されていない
USB3.2・「Thunderbolt X」をサポートしていない。
・「DisplayPort」以外のオルタネートモードは保証されていない。
USB4「Thunderbolt 3」との互換性を持つことを目指して設計されているが、最終的な判断はメーカー次第。
・「DisplayPort」以外のオルタネートモードは保証されていない。
Thunderbolt 3・「USB 3.x (3.2 Gen 2まで)」をサポート。
・「DisplayPort」以外のオルタネートモードは保証されていない
Thunderbolt 4「USB 3.x (3.2 Gen 2まで)」をサポート。
・「USB4」をサポート。
・「DisplayPort」以外のオルタネートモードは保証されていない

希望するサブディスプレイ数ごとの必要な機器・要件

上記を踏まえたうえで、具体的にマルチディスプレイを実現する機器を見ていきたいと思います。

実現する目的や希望するディスプレイ数により必要なものが異なってくるので、以下で3つのシチュエーションに分けて解説しますね。

  • メインディスプレイ以外にサブディスプレイが1つ必要
  • メインディスプレイ以外にサブディスプレイが2つ~4つ必要
  • メインディスプレイ以外にサブディスプレイが5つ~必要

※以下の説明では「希望するサブディスプレイの数」を「N」として説明します。

※HDMIとDisplayPortなど各種映像出力端子を併用することは可能ですが、解像度やリフレッシュレートなどの性能面の差異には注意してください。

※「デイジチェーン接続」ではHDMIが使用できないのでご注意ください。

1. メインディスプレイ以外にサブディスプレイが1つ必要

基本的なやり方は2種類ありますが、将来的にディスプレイを追加したいという場合は拡張性のある1-2がオススメです(ただし、基本的にはMac系の端末を想定した手法なので、DisplayPort OutポートがないWindowsは1-1にて対応しましょう)。

また、将来的なディスプレイの増設を検討されている場合は、PCやディスプレイのスペックを後述の「メインディスプレイ以外にサブディスプレイが2つ~4つ必要」や「メインディスプレイ以外にサブディスプレイが5つ~必要」を参考に決められると良いと思います。

1-1. HDMI(もしくはDisplayPort1.4未満)ベースで接続する方法

機器スペックに関して殆ど気にする必要がなく、「メインディスプレイの他に追加でとりあえずの1画面を増やしたい場合」「今既にお持ちのディスプレイをサブディスプレイにしたい」という場合にうってつけです。

必要な機器
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • HDMI(もしくはDisplayPort)→HDMI(もしくはDisplayPort)ケーブル:1本
  • 外部ディスプレイ:1台
各機器に求められる要件
最低要件
PCHDMI(もしくはDisplayPort)Outポートがある。
映像出力ケーブルデイジーチェーンに対応していないDisplayPort1.4未満も対応。
外部ディスプレイHDMI(もしくはDisplayPort)Inポートがある。
メリット
  • 機器スペックに関して殆ど気にする必要がないこと。
デメリット
  • 将来的に追加でディスプレイを増やしたいという場合に拡張性がなく、もし更に増設する場合には別のやり方にする必要があること。

1-2. デイジーチェーンを用いる方法

ここで重要なのはUSB Type-Cで接続を行う場合、Thunderbolt 3ないし4に対応している必要があり、WindowsはDisplayPort1.4以上が必須ということです(USB3.XやUSB4ではNG)

必要なもの
  • ノートないしデスクトップPC:1台
  • USB Type-C(もしくはDisplayPort)→USB Type-C(もしくはDisplayPort)ケーブル
  • 外部ディスプレイ:1台(ただし、終端ディスプレイなのでOutポートは必要ない
各機器に求められる要件
最低要件
PCUSB Type-C(Thunderbolt 3ないし4対応)Outポート、もしくはDisplayPort(バージョン1.4以上対応)Outポートがある。
映像出力ケーブルUSB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上。
外部ディスプレイUSB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上のInポートがある。
メリット
  • 拡張性があり、複数画面増設する場合にも対応が容易。
デメリット
  • 一定以上の機器要件が必要なため、導入フェーズとしてはハードルが高く感じることもある。
  • USB Type-Cで接続する場合には、Thunderbolt 3ないし4が必要なため、Windows端末では利用しにくいと考えられる。

サブディスプレイが1つ欲しい場合のオススメ

とりあえずサブディスプレイが1つ欲しいのであれば「HDMI(もしくはDisplayPort1.4未満)ベースで接続する方法」でも問題ありません。

ただし、Mac系の端末を利用されていたり、DisplayPort1.4以上のOutポートがあるWindows端末をお持ちの方で、将来的に更なる画面増設を検討されている場合はディスプレイ台数に関わらず適用可能な「デイジーチェーンを用いる方法」を用いた方が良いでしょう。

2. メインディスプレイ以外にサブディスプレイが2つ~4つ必要

1に比べると必要機材が増えますが、まだ環境構築の難易度としては大したことありません。基本的なやり方としては2種類あります。

  • 変換アダプタ(もしくはDisplayLink対応ドッキングステーション)を用いる方法
  • デイジーチェーン接続を用いる方法

また、個別の説明では言及しませんが、サブディスプレイを3つないし4つ設置する場合、家庭用であれ業務用であれ、ディスプレイ標準のスタンドでは机が手狭になる可能性が高いと思います。その場合はスタンド(アーム)を設置してディスプレイの置き場所をコンパクトにまとめるのが良いでしょう。

2-1. 変換アダプタ(もしくはDisplayLink対応ドッキングステーション)を用いる方法

デスクトップPCであれば多くの場合、HDMI、DisplayPortを合わせて複数の映像出力端子がサポートされていると思いますが、ノートPCで複数の映像出力端子が標準サポートされていることは期待しない方が良いでしょう。

なので、この方法ではUSB Type-Cの「Altモード」(平たく説明すると、USB Type-Cを通じて映像を代替出力出来るモード)と変換アダプタを用いて、PCが利用できるDisplayPort(Altモードが対応していればHDMI)端子の数を増やすことで、それぞれのディスプレイに対して映像出力をするようにします(変換アダプタの上位互換であるDisplayLink対応ドッキングステーションを使用すればPCのポートがUSB-Aでも出力可能です)。

Altモードを利用するこのやり方の注意点として、DisplayPortは高い確率でサポートされていますが、HDMI出力がサポートされているかは実際に機器を接続してみないと分からない可能性があります。なので、変換アダプタや外部ディスプレイはDisplayPortに対応したものを購入するのが無難でしょう。

必要なもの
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • 変換アダプタ(もしくはDisplayLink対応ドッキングステーション):1台
  • DisplayPort(もしくはHDMI)→DisplayPort(もしくはHDMI)ケーブル:N本
  • 外部ディスプレイ:N台
  • スタンド(アーム):希望する外部ディスプレイを設置可能な本数
各機器に求められる要件
最低要件あると好ましい要件
PC(Altモード対応)USB Type-C Outポート(DisplayLink対応ドッキングステーションであればUSB-AでもOK)。・CPU&メモリ:Intel Core i5やRyzen 5クラス以上のプロセッサ8GB以上のメモリが好ましい…DisplayLinkのようなソフトウェア処理を用いて3台以上の外部ディスプレイに接続すると、遅延やリフレッシュレートの低下が発生することがあるため外部ディスプレイが4Kなど高解像度ディスプレイの場合は、16GB以上のメモリが理想的
変換アダプタ(もしくはDisplayLink対応ドッキングステーション)・USB Type-C InポートとDisplayPort(Altモードが対応していればHDMIでもOK)OutポートN箇所の変換が可能。
映像出力ケーブル
外部ディスプレイDisplayPort(Altモードが対応していればHDMIでもOK)Inポートがある。VESA準拠…VESA規格に準じていないディスプレイは、別途アタッチメントを購入してスタンドにセットする必要がある。
・IPS準拠…作業効率重視であれば、光沢がないものが画面を見やすい
・ベゼル…画面を並べたときに途切れないように上下左右のベゼルは細いものが好ましい。
スタンド(アーム)・希望するレイアウトに応じて外部ディスプレイ重量を支えられる。
※机に十分な広さがあり、ディスプレイを平置きする余裕があればスタンド(アーム)は不要。
環境構築例

変換アダプタ

DisplayPort Outポートが3箇所あり、ディスプレイの追加が容易。

■ 映像出力ケーブル

Amazonベーシックなのでシンプルなデザインでコストパフォーマンスも高い。

■ 外部ディスプレイ

リフレッシュレートこそ75Hzだが、要件を満たしたディスプレイの中で販売実績が豊富であり、DisplayPort、HDMIに対応している。

■ スタンド(アーム)

ディスプレイの設置予定台数や机の上のレイアウトをどうするかにもよるが、縦×横2画面ずつの計4画面配置にする予定がないのであればこれで十分。

メリット

このやり方のメリットとしてはハブを用いた構成が理解しやすく、DisplayPort(Altモードが対応していればHDMI)に対応したディスプレイさえあれば、マルチディスプレイが実現可能なことです。

例え一部のモニターでトラブルが発生した場合であっても構成自体を変更する必要はなく、当該ディスプレイを交換すれば処置が完了するので、トラブルシューティングも容易です。

デメリット

変換アダプタ(もしくはDisplayLink対応ドッキングステーション)が必要なことです(この規模のアダプタであれば最も安いものは数千円で購入できるので、あまり大きな出費にはならないかもしれませんが)。

また、特にDisplayLink対応ドッキングステーションのいずれもPCのCPUやシステムリソースに依存するため、遅延やフレームレート低下が発生しやすく、特に動画再生やグラフィック処理が多い作業では性能が低下する可能性があります。

オフィス作業やウェブブラウジングには問題なく使えますが、高負荷な用途を行う場合にはこの後に紹介するデイジーチェーンを用いる方法をオススメします。

2-2. デイジーチェーンを用いる方法

変換アダプタ(DisplayLink対応ドッキングステーション)を用いた方法よりも安価で高性能なのが、1-2でも紹介した「デイジーチェーンを用いる方法」です。

USB Type-Cで接続を行う場合、Thunderbolt 3ないし4に対応している必要があるため、Windows端末でこの方法を利用する場合はDisplayPort1.4以上のOutポートが必須になります(USB3.XやUSB4ではNG)。

必要なもの
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • USB Type-C(もしくはDisplayPort)→USB Type-C(もしくはDisplayPort)ケーブル:N本
  • 外部ディスプレイ:N台
  • スタンド(アーム):希望するサブディスプレイを設置可能な本数
各機器に求められる要件
最低要件あると好ましい要件
PCUSB Type-C(Thunderbolt 3/4対応)Outポート、もしくはDisplayPort(バージョン1.4以上対応)Outポート。・メモリ:外部ディスプレイが4Kなど高解像度ディスプレイの場合は、16GB以上のメモリが理想的
映像出力ケーブルUSB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上。
外部ディスプレイ(中継)USB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上のIn&Outポートがある。VESA準拠…VESA規格に準じていないディスプレイは、別途アタッチメントを購入してスタンドにセットする必要がある。
・IPS準拠…作業効率重視であれば、光沢がないものが画面を見やすい。
・ベゼル…画面を並べたときに途切れないように上下左右のベゼルは細いものが好ましい。
外部ディスプレイ(終端)USB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上のInポートがある(終端ディスプレイにデイジーチェーン用Outポートは必要ない・外部ディスプレイ(中継)と同一
スタンド(アーム)・希望するレイアウトに応じて外部ディスプレイ重量を支えられる。
※机に十分な広さがあり、ディスプレイを平置きする余裕があればスタンド(アーム)は不要。
環境構築例

■ 映像出力ケーブル(USB Type-C)

Thunderbolt 3/4に対応しており、4K、8Kなどの高解像度出力も可能。

■ 映像出力ケーブル(DisplayPort)

DisplayPortバージョン1.4用に対応しており、4K、8Kなどの高解像度出力も可能。

■ 外部ディスプレイ

USB Type-C、DisplayPortのポートがありデイジーチェンに対応している。対応解像度はWQHDまでだが、フレームレスなのでディスプレイを並べたときにすっきりする。

■ スタンド(アーム)

ディスプレイの設置予定台数や机の上のレイアウトをどうするかにもよるが、縦×横2画面ずつの計4画面配置にする予定がないのであればこれで十分。

メリット

変換アダプタが不要なので安価に環境構築が出来ます。

また、変換アダプタのように信号を変換する必要がなく、USB Type-C(もしくはDisplayPort)をそのまま使用して複数のディスプレイを接続するため、PCのGPU性能が直接的に反映され、こと映像処理という点に関しては前項で紹介した変換アダプタを用いた方法よりも高性能です。

1-2で紹介しているように、外部ディスプレイが何枚あっても(何枚増えても)同じ方法で対応できるため、拡張性が高いのも特徴です。

デメリット

USB Type-Cで接続する場合にはThunderbolt 3ないし4が必要なため、Windows端末ではDisplayPort1.4以上が必須であり、対応機種が限られます。

また、終端以外のディスプレイはデイジーチェーンに対応している必要がある(USB Type-CもしくはDisplayPortのOutポートが必要)ため、現在お持ちのディスプレイをマルチディスプレイに流用するという運用が出来ない可能性があります。

上記に加えて、PCと複数のディスプレイを直列で接続するため、一部ディスプレイにトラブルが発生した場合や単純にディスプレイを交換したい場合などに数珠つなぎのディスプレイを再構成する必要があり、トラブルシューティングも複雑になります。

サブディスプレイが2つ~4つ欲しい場合のオススメ

Windows環境で構築したいのであれば「変換アダプタを用いる方法」、Mac系の端末をお持ちであれば「デイジーチェーンを用いる方法」を採用するのが良いでしょう(DisplayPort1.4以上が利用可能なWindowsは後者が吉)。

3. メインディスプレイ以外にサブディスプレイが5つ~必要

この規模になってくると変換アダプタのような簡易的な機器による出力が難しいため、変換アダプタの上位互換である「DisplayLink対応ドッキングステーション」を用いた方法を含む、以下の3つが考えられます。

  • 外部グラフィックボードを用いる方法(※)
  • DisplayLink対応ドッキングステーションを用いる方法
  • デイジーチェーン接続を用いる方法

※1つ目の「外部グラフィックボードを用いる方法」はデスクトップPCであれば内蔵グラフィックボードを追加することでも対応可能です。

それぞれのケースで必要なものを解説していきます。

3-1. 外部グラフィックボードを用いる方法

本来の使用用途が「ディスプレイ増設」というより「グラフィック性能の向上」であるため、多数のディスプレイを増設した場合であってもスムーズな処理が可能です(今回紹介している方法のうち、最もスムーズに処理できる方法がコレ)

必要なもの
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • 外部グラフィックボード:1台
  • HDMI(もしくはDisplayPort)→HDMI(もしくはDisplayPort)ケーブル:N本
  • 外部ディスプレイ:N台
  • スタンド(アーム):希望するサブディスプレイを設置可能な本数
各機器に求められる要件
最低要件あると好ましい要件
PC外部グラボ接続に必要な規格:外部グラボごとに異なるが、一般的にはThunderbolt 3ないし4に対応している必要がある(ノートPC、デスクトップPC共通)。
・外部グラボの電源供給を補うために「500Wから850W以上の電源ユニット容量(※1)」「6ピンや8ピンの補助電源コネクタが必要(デスクトップPC)。
・GPU:5画面以上を安定して使うためには、NVIDIAやAMDの高性能GPU(例:NVIDIA GeForce RTXシリーズやAMD Radeon RXシリーズ)が欲しい。
・メモリ:外部ディスプレイが4Kなど高解像度ディスプレイの場合は、16GB以上のメモリが理想的
外部グラフィックボード・HDMI(もしくはDisplayPort)OutポートがN箇所ある。
・外部グラボの電源供給を補うために「eGPUボックス(外部GPUエンクロージャー)」が必要になることも(ノートPC)。
映像出力ケーブル
外部ディスプレイHDMI(もしくはDisplayPort)Inポートがある。VESA準拠…VESA規格に準じていないディスプレイは、別途アタッチメントを購入してスタンドにセットする必要がある。
・IPS準拠…作業効率重視であれば、光沢がないものが画面を見やすい。
・ベゼル…画面を並べたときに途切れないように上下左右のベゼルは細いものが好ましい。
スタンド(アーム)※2・希望するレイアウトに応じて外部ディスプレイ重量を支えられる。
※1:マザーボードやCPU、GPU、ストレージなどPC内部のすべてのコンポーネントに電力を供給するために、家庭のコンセントから供給される交流電力(AC)をPC内部で使用する直流電力(DC)に変換した際の容量。
※2:机に十分な広さがあり、ディスプレイを平置きする余裕があればスタンド(アーム)は不要。
環境構築例

グラフィックボード

HDMIとDisplayPortのOutポートが3ポートずつあり、このGPU単体で最大6画面出力まで対応可能。

eGPUボックス

上記のグラフィックボードに対応しているeGPUボックス。USBポートやLANポートも付いており機能性が高い。

■ 映像出力ケーブル

Amazonベーシックなのでシンプルなデザインでコストパフォーマンスも高い。

■ 外部ディスプレイ

リフレッシュレートこそ75Hzだが、要件を満たしたディスプレイの中で販売実績が豊富であり、DisplayPort、HDMIに対応している。

■ スタンド(アーム)

ディスプレイの設置予定台数や机の上のレイアウトをどうするかにもよるが、4画面以上設置する場合、縦×横2画面ずつ計4画面まで対応できるアームがおすすめ。

メリット

GPUを強化することで、ディスプレイ増設は元より、ゲームや3Dレンダリング、ビデオ編集などの高負荷なグラフィック作業性能が強化されるため、それらを目的にディスプレイ増設される方はこれ一択でしょう。

ハブを用いた構成がシンプルで、外部グラボ以外の機器に関しては比較的要件が緩いこともメリットかも知れません。

デメリット

(例えばPC内蔵GPUと外部GPUを併用するなど)外部グラボの設定を適切なものにするのには、BIOSの設定変更をする必要があるので、PCに詳しくない方だと手に負えない可能性があります。

また、安くても数万円からと価格帯が高いことと、外部グラボのサイズがある程度大きくなることが予想されるので、外部グラボ用にスペースを確保する必要があるため、手狭な机だとレイアウトが難しいかもしれません。

3-2. DisplayLink対応ドッキングステーションを用いる方法

外部グラボの基本的な役割が「グラフィック性能の向上」であるのに対して、DisplayLink対応ドッキングステーションの役割は「PCやディスプレイなど各種機器のハブ」です。マルチディスプレイを実現するのは勿論のこと、SDカードや追加のUSBポートなどPCでカバーできない各種端子を補います。

必要なもの
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • DisplayLink対応ドッキングステーション:1台
  • HDMI(もしくはDisplayPort)→HDMI(もしくはDisplayPort)ケーブル:N本
  • ディスプレイ:N台
  • スタンド(アーム):希望するサブディスプレイを設置可能な本数
各機器に求められる要件
最低要件あると好ましい要件
PCUSB Type-C、もしくはUSB-AポートでもOK・GPU:5画面以上を安定して使うためには、NVIDIAやAMDの高性能GPU(例:NVIDIA GeForce RTXシリーズやAMD Radeon RXシリーズ)が欲しい
・CPU&メモリ:Intel Core i5やRyzen 5クラス以上のプロセッサと8GB以上のメモリが好ましい…DisplayLinkのようなソフトウェア処理を用いて3台以上の外部ディスプレイに接続すると、遅延やリフレッシュレートの低下が発生することがあるため(外部ディスプレイが4Kなど高解像度ディスプレイの場合は、16GB以上のメモリが理想的)。
DisplayLink対応ドッキングステーション・HDMI(もしくはDisplayPort)OutポートN箇所ある。
映像出力ケーブル
外部ディスプレイHDMI(もしくはDisplayPort)Inポートがある。VESA準拠…VESA規格に準じていないディスプレイは、別途アタッチメントを購入してスタンドにセットする必要がある。
・IPS準拠…作業効率重視であれば、光沢がないものが画面を見やすい。
・ベゼル…画面を並べたときに途切れないように上下左右のベゼルは細いものが好ましい。
スタンド(アーム)・希望するレイアウトに応じて外部ディスプレイ重量を支えられる。
※机に十分な広さがあり、ディスプレイを平置きする余裕があればスタンド(アーム)は不要。
環境構築例

DisplayLink対応ドッキングステーション

HDMIとDisplayPortに対応していて、最大4画面まで出力可能。

■ 映像出力ケーブル

Amazonベーシックなのでシンプルなデザインでコストパフォーマンスも高い。

■ 外部ディスプレイ

リフレッシュレートこそ75Hzだが、要件を満たしたディスプレイの中で販売実績が豊富であり、DisplayPort、HDMIに対応している。

■ スタンド(アーム)

ディスプレイの設置予定台数や机の上のレイアウトをどうするかにもよるが、4画面以上設置する場合、縦×横2画面ずつ計4画面まで対応できるアームがおすすめ。

メリット

外部グラボと比較して安価な価格帯でマルチディスプレイを実現しつつ、PCに各種周辺機器(USB機器、LAN、音声出力など)とのハブ機能を追加することが出来ます。

また、変換アダプタと異なり、USB通信を利用してソフトウェアで映像を処理するので、Altモード非対応の旧式USBポート(USB-A)でも使用できます。

デメリット

外部グラボに比べれば割安とは言え、数万円はします。

また、GPU自体はPCのものを利用し、ソフトウェアを使って映像信号として処理するため、動画再生やグラフィックが遅延したり、フレームレートが低下する可能性が高くなります。オフィス作業やブラウジングなどの軽作業には対応できますが、3-1、3-2、3-3の中で負荷のかかる作業には最も向いていないと言えるかもしれません。

USB-Aを経由して外部ディスプレイに映像出力が可能になるなど、一定の利便性はあるものの、高負荷作業には不向きなのでご注意ください。

3-3. デイジーチェーン接続を用いる方法

3度目の登場なので、もうお馴染みですね。

ここまで見てきて分かるように、外部ディスプレイの数が少なくても多くても汎用的に採用出来るのがデイジーチェーンの強みとなります。

ただし、繰り返し言及しているように、Windws端末の場合(Mac系端末でない場合)はDisplayPort1.4以上が必要なことと、グラフィック性能が少なからずPCのGPU・CPUに影響を受けるため、その点はご注意ください。

必要なもの
  • ノートもしくはデスクトップPC:1台
  • USB Type-C(もしくはDisplayPort)→USB Type-C(もしくはDisplayPort)ケーブル:N本
  • 外部ディスプレイ:N台
  • スタンド(アーム):希望するサブディスプレイを設置可能な本数
各機器に求められる要件
最低要件あると好ましい要件
PCUSB Type-C(Thunderbolt 3ないし4対応)Outポート、もしくはDisplayPort(バージョン1.4以上対応)Outポート。・GPU:5画面以上を安定して使うためには、NVIDIAやAMDの高性能GPU(例:NVIDIA GeForce RTXシリーズやAMD Radeon RXシリーズ)が欲しい。
・メモリ:外部ディスプレイが4Kなど高解像度ディスプレイの場合は、16GB以上のメモリが理想的
映像出力ケーブルUSB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上。
外部ディスプレイ(中継)USB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上のIn&Outポートがある。VESA準拠…VESA規格に準じていないディスプレイは、別途アタッチメントを購入してスタンドにセットする必要がある。
・IPS準拠…作業効率重視であれば、光沢がないものが画面を見やすい。
・ベゼル…画面を並べたときに途切れないように上下左右のベゼルは細いものが好ましい。
外部ディスプレイ(終端)USB Type-CであればThunderbolt 3ないし4対応、DisplayPortであればバージョン1.4以上のInポートがある(終端ディスプレイにデイジーチェーン用Outポートは必要ない・外部ディスプレイ(中継)と同一
スタンド(アーム)・希望するレイアウトに応じて外部ディスプレイ重量を支えられる。
※机に十分な広さがあり、ディスプレイを平置きする余裕があればスタンド(アーム)は不要。
環境構築例

■ 映像出力ケーブル(USB Type-C)

Thunderbolt 3/4に対応しており、4K、8Kなどの高解像度出力も可能。

■ 映像出力ケーブル(DisplayPort)

DisplayPortバージョン1.4用に対応しており、4K、8Kなどの高解像度出力も可能。

■ 外部ディスプレイ

USB Type-C、DisplayPortのポートがありデイジーチェンに対応している。対応解像度はWQHDまでだが、フレームレスなのでディスプレイを並べたときにすっきりする。

■ スタンド(アーム)

ディスプレイの設置予定台数や机の上のレイアウトをどうするかにもよるが、4画面以上設置する場合、縦×横2画面ずつ計4画面まで対応できるアームがおすすめ。

メリット

外部グラボやDisplayLink対応ドッキングステーションなどの高価な機材を購入すること無く、安価に5画面以上のマルチディスプレイを実現できます。

また、PCの内蔵GPU性能が直接反映されるため、(同一条件のDisplayLinkと比較した場合には)解像度やリフレッシュレートが高い状況でもパフォーマンスが安定します。

デメリット

DisplayLinkと比較して高いパフォーマンスを発揮できるとは言え、帯域幅には限界があるため、接続するディスプレイ数が増えると、全体の解像度やリフレッシュレートが制限されることがあります。

ココから下は2-3と同様なので、引用しておきます。

USB Type-Cで接続する場合にはThunderbolt 3ないし4が必要なため、Windows端末ではDisplayPort1.4以上が必須であり、対応機種が限られます。

また、終端以外のディスプレイはデイジーチェーンに対応している必要がある(USB Type-CもしくはDisplayPortのOutポートが必要)ため、現在お持ちのディスプレイをマルチディスプレイに流用するという運用が出来ない可能性があります。

上記に加えて、PCと複数のディスプレイを直列で接続するため、一部ディスプレイにトラブルが発生した場合や単純にディスプレイを交換したい場合などに数珠つなぎのディスプレイを再構成する必要があり、トラブルシューティングも複雑になります。

サブディスプレイが5つ~欲しい場合のオススメ

この規模になってくると、中継端末(外部グラボやDisplayLink対応ドッキングステーション)が高額になってくるため、費用対効果を考えればデイジーチェーン一択と言えるでしょう。

ただし、デイジーチェーンを用いた方法をWindowsで実現させるにはDisplayPort1.4以上のポートが必須となってくるのでその旨理解しておくとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか。

今ご利用のPC端末などを前提としてマルチディスプレイ環境を構築するとなると意外と大変かもしれませんね。

Mac系の端末だとThunderboltが実装されているため、デイジーチェーンを実現する際の選択肢が豊富ですが、Windowsでマルチディスプレイを実現させたいとなると、ポートの規格に依存するところが大きいため、PC購入がこれからであれば、予めマルチディスプレイを念頭に置いたスペックで購入するのが良さそうです。

今回の記事が機器購入ご判断の参考になれば幸いです(尚、最終的な機器購入のご判断はご自身の責任にてされるようにお願いいたします)。

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